ケース9 下顎小臼歯 意図的再植
※症例紹介の情報は、すべて患者様に許可を得た上で掲載しております。
40代 男性
主訴「右下の歯の歯茎が何度も腫れる。他院では抜歯宣告を受けた。なんとか残せないか。」
部位:右下5
歯髄診断名 :Previously treated
根尖部診断名: Symptomatic apical periodontitis
治療法:再根管治療 Retreatment
初診時のレントゲン写真
右下5の根尖に大きな膿の袋(黒い影)が見られる。
太い金属ポストが入っている。
根管治療開始。
超音波チップを用いて、歯牙破折しないように慎重に金属ポストを除去。
その後、隔壁を作成してラバーダム防湿をしてからガッタパーチャを除去。
拡大、洗浄、最後に貼薬を行い、1回目の根管治療を終了。
治療2回目の時に、バイオセラミック系のシーラーを用いて根管充填、ファイバーポストを用いて支台築造。
これらもすべてラバーダム防湿下で行った。
3ヶ月後にレントゲン撮影を行い、根尖の膿の袋(黒い影)の縮小を確認予定だったが、
それを待たずして前回の根管治療終了後から2週間後に歯茎の腫れを訴えられた。
根管治療のみで原因である細菌や感染物質を除去することを達成できなかったため、
意図的再植の介入を決断。術前に説明はしていたが、再度内容等を患者に説明し同意を得る。
(歯根端切除術はオトガイ孔が右下5の根尖に近いことから、神経麻痺のリスクを考慮し回避。)
歯牙破折しないように、ダイヤモンドコーティングされた鉗子を用いて慎重に時間をかけて抜歯をした。
マイクロスコープ下で根尖部の切除。
根管治療では取り除けない細菌や感染物質は根尖から3mmまでのところに約90%集中するのと、
もとの歯根の長さを考慮し根尖部から2mmまでのところを切断。
マイクロスコープ下で、超音波チップを用いて逆根管形成。
マイクロスコープ下でMTAを用いて逆根管充填。
意図的再植直後のレントゲン写真。
術後3ヶ月のレントゲン写真。

術後6ヶ月のレントゲン写真。
根尖の膿の袋(黒い影)の縮小し、
徐々に膿の袋が周りの組織に吸収され骨に置き換わっているのがわかる。
症状や歯の揺れ(動揺)などなく、経過良好と判断。
紹介先の主治医へ被せ物の型取りを依頼。当院でも引き続き経過観察を行う予定。
<治療費用>
・初診カウンセリング ¥5,500(税込)
・再根管治療(前歯部) ¥134,000(税込)
・ファイバーポストコア ¥11,000(税込)
・歯根端切除術 ¥55,000(税込)
※被せ物の費用は含まれていません。
<治療期間> 約2〜3週間
<治療回数> 根管治療2回 歯根端切除術1回
今回の治療の利点・欠点
利点
・歯の保存。
・欠損補綴の回避。
欠点
・治療による偶発症(器具破折、アレルギー反応、口唇や歯茎の損傷、疼痛ショック)。
コメント
・今回のケースはまず根管治療を行う上で、太い金属ポストを除去する際の歯根破折のリスク、
そしてもし根管治療で治らなかった時の意図的再植時の抜歯の時の歯根破折のリスクがあり、
歯の保存不可と隣り合わせの治療行為が何度かあった。
無事、歯は割れることなく、治癒に導くことができた。
もしこの歯が抜歯となった場合、隣の歯はインプラントのため、
天然歯とインプラントはブリッジできないことから、
抜いたところに歯を入れる選択肢が入れ歯かインプラントに限定されてしまう。
今回、術前のリスクをしっかりとお聞きになられた上で治療介入をされるという
勇気ある決断をされた患者様の期待にこたえることができて本当によかったです。
院長 白瀬 浩太郎
しらせデンタルクリニック
〒520-0832 滋賀県大津市粟津町17番39号 style II 1F
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