2021年9月9日
歯根の破折
【しらせデンタルクリニック】院長の白瀬浩太郎です。
今回のコラムのテーマは歯根破折です。
「できる限り歯を残したい」という要望を持って当院へ来られる方が多くいらっしゃいます。
根の病気は最善を尽くせば、90%は治癒に導くことができますが、
歯根破折している歯を治すのはほぼ不可能です。
歯根破折とは、名の通り「歯根が割れる」ことです。
最終的には、薪を割ったように真っ二つに割れます。
こうなるとほとんどの場合、抜歯です。
また真っ二つに割れる前に、破折線と呼ばれる亀裂が見つかることもあります。
深い亀裂が入っていても、時には自覚症状などなく、
他の歯の治療で受診した際に偶然見つかることがあります。
破折線が深くまで及んでると同じく抜歯と診断されます。
歯根破折する主な原因として、
① 歯質が少なくなった
② 噛む力による負担
があります。
①の「歯質が少なくなった」ですが、
くり返し「虫歯治療」や「根の治療」を行うと、
治療するたびにどんどん歯質が少なくなります。その減った量に比例して強度も下がります。
補強によって少しは強度を回復させることはできますが、元通りというわけにはいきません。
少し専門的な話になりますが、
Vire 1) の抜歯された116本を対象にした調査では、抜歯の理由の約60%が被せ物に関わる破折
(歯質が少なく被せ物で補強したけど、それでも歯が割れて抜歯になったことを意味しています)、
32%が歯周病であり、根の治療が抜歯理由となるのは8.6%であったと報告していています。
Reehら2) は、歯の最大の強度低下の要因は、MOD窩洞形成
(歯を正方形に例え、壁が4つあるとして、その壁が前後で2枚削られた状態のこと)であり、
歯の強度を60%以上低下させたと報告しています。
次に②の「噛む力による負担」ですが、
顎ががっちりしてて噛む力の強い方や、
片方の奥歯がなくもう片方だけで噛まざるをえない方などは
歯が割れるリスクが高いと言えるでしょう。
また、寝ている時にする歯ぎしり(ブラキシズム)も歯が割れるリスク要因になります。
まとめ
歯根破折を防ぐには、できる限り歯質を保存する、
そのためにも日々のブラッシングをしっかりして虫歯にならないようにする、
もし治療が必要になっても、最善の治療などについてきちんと歯科医と相談することが大切です。
当院は根の治療の専門医院です。
できるだけ再発しない根の治療についてのご相談を希望される方は
お気軽にお問い合わせください。
院長 白瀬 浩太郎
〜 科学的根拠(エビデンス)に基づいた世界標準の根管治療を 〜
「歯の痛み、歯茎の張れ、深い虫歯、神経を残す治療、神経を抜く治療、根の治療 、
膿の袋の治療、歯根嚢胞の治療、歯の移植」等でお困りの方は【しらせデンタルクリニック】まで
お問い合わせください。
引用文献
1・Vire DE.
Failure of endodontically treated teeth: classification and evaluation.
J Endod.1991; 17: 338-342.
2・Reeh ES, Messer HH, Douglas WH.
Reduction in tooth stiffness as a result of endodontic and restorative procedures.
J Endod. 1989;15:512–516.