2021年6月1日
「歯根端切除術」
【しらせデンタルクリニック】院長の白瀬浩太郎です。
今回のテーマは「歯根端切除」です。
「歯根端切除」???
一般の方には聞き慣れない言葉と思います。
下の図をご覧ください。
「歯根端切除」とは、
「根の治療」の次の手段(セカンドステップ)として行う処置です。
つまり「根の治療」で最善を尽くしても治らない時に行う、最後の手段になります。
(FRANK J.VERTUCCI. Endod Topics 2005;10:3-29.)
この図のように、歯の根管(こんかん)は細かく枝分かれしており、
取りきれない細菌が根の先の部分に残ることがあります。
そのときに、根の先だけを切断してその切断面から根管内へお薬を詰める処置を、
「歯根端切除術」と言います。
通常は根の再治療を行い、それでも治らないときに歯根端切除術を行いますが、
以下の時は通常の根の治療を行わず、最初から歯根端切除術を選択します。
・太く長い金属の土台が入っていて、除去による歯の破折リスクが高いとき
・「根の治療」が必要な歯の被せ物の除去に対して、患者様から同意を得られないとき
歯根端切除は非常に予知性の高い術式です。
マイクロスコープ下で行う「歯根端切除」の成功率は約90%と報告されています。
(Setzer FC,et al. J Endod. 2010)
成功率を見ると、最初から積極的に「歯根端切除」をした方が良さそう思えます。
しかし、「歯根端切除」は歯肉をめくったり、部分的に顎の骨を削ったりと、
「通常の根の治療」よりも患者様への侵襲性(しんしゅうせい)が高いのが特徴です。
さらに、根尖部を切除するため、歯を支える支持組織もその分少なくなります。
そして、「歯根端切除」で解決できなかった場合の次の選択肢は抜歯です。
状況によっては例外もありますが、まずは「根の治療」によって根管経由からの
細菌の除去を試みることが、第一選択となります。
それでも解決されない時は、最後の切り札として歯根端切除に踏み切ります。
日本国内で一般的に行われている歯根端切除術は根の先を切断して終わることが多いです。
さきほども書きましたが、
取り残した細菌を除去するために切断したあとに根管を少し掘り(逆根管形成)、
お薬を詰めて(逆根管充填)封鎖する必要があります。
ここはとくに精密な手技が求められるため、肉眼で行うのは推奨されません。
マイクロスコープの高倍率視野で、切断面の診査、逆根管形成、逆根管充填を行うことによって
90%の成功率を導くことができます。ただし、これらの処置は高い技術や設備が必要となるため、
当院では自費診療で行っています。
ちなみに切断するだけの歯根端切除の成功率は約60%と報告されています。
歯根端切除術で治らなければ、次は抜歯です。
患者様それぞれが納得のいく治療の選択をされることを願っています。
院長 白瀬 浩太郎
しらせデンタルクリニック
〒520-0832 滋賀県大津市粟津町17番39号 style II 1F
〜 科学的根拠(エビデンス)に基づいた世界標準の根管治療を 〜
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引用文献
Setzer FC, Shah SB, Kohli MR, Karabucak B, Kim S.
Outcome of Endodontic Surgery: A Meta-analysis of the Literature―Part 1: Comparison of Traditional Root-end Surgery and Endodontic Microsurgery.J Endod 2010;36(11):1757-1765.
Karabucak B, Setzer F.
Criteria for the Ideal Treatment Option for Failed Endodontics: Surgical or Non-Surgical? Compend Contin Educ Dent 2007;28(7):391-7; quiz 398, 407.