根の治療の成功率について
何をもって「根の治療」は成功したと言えるのでしょうか?
■成功の判定基準
① 症状がない(歯の痛みや膿の出口の消失)
② レントゲンで膿の袋の縮小がみられる
※Friedman S, et al. J Calif Dent Assoc. 2004.(一部改変)
治療後に、この二つが成立して根の治療は成功したと言えます。
特に、「※1膿の袋」と「※2膿の出口」は客観的に判断しやすい指標です。
※2 根の先に溜まった膿が歯肉を破って出てくる出口のこと。歯肉に白くプチッとニキビみたいに見える。
通常、根の治療が奏功していれば術後3ヶ月もすると、レントゲン写真で膿の袋の縮小傾向がみられます。長く経過をみても膿の袋の大きさに変化がなかったり、もしくは以前より大きくなっていれば治癒不全(失敗)の可能性が高いでしょう。
また、膿の出口は、治療後1週間以内に速やかに消失することがほとんどです。
数週間待っても消えなかったり、一度消えたのがまた出てきた場合は同じく治癒不全である可能性が高いと言えます。
■根の治療の成功率
これからお伝えする成功率は独自の経験則などではなく、全て※論文を元にした成功率であり、それは以下の条件を満たしていることが前提です。
・ラバーダム防湿
・科学的根拠に基づいた拡大と洗浄
・マイクロスコープ
・MTA
※Sjogren U, et al. J Endod.1990. Salehrabi R,et ai.J Endod.2004 Setzer FC, et ai.J Endod.2010. Gorni FGM, et al.J Endod.2004・科学的根拠に基づいた拡大と洗浄
・マイクロスコープ
・MTA
またこれらの条件を満たしていても、成功率は歯の状態によって異なります。
おおまかに以下のA~Dの4つのパターンに分けられます。
これは、繰り返される根の治療による根管の変形が、根管内の拡大・洗浄の弊害となり細菌除去の効果に影響するためです。
また膿の袋があるということは根の先まで感染の範囲が広がっていることを意味するため、成功率に影響します。
根管治療で治らない場合、 歯根端切除術が必要になります。
歯根端切除は非常に予知性の高い治療です。
マイクロスコープ下で行う「歯根端切除」の成功率は約90%と報告されています。
(Setzer FC,et al. J Endod. 2010)
成功率を見ると、最初から積極的に「歯根端切除」をした方が良さそう思えます。
しかし「歯根端切除」は、歯肉をめくったり、部分的に顎の骨を削ったり、根を一部切除したりと、「根管治療」よりも侵襲性(しんしゅうせい)が高いのが特徴です。
そして、「歯根端切除」で解決できなかった場合の次は抜歯です。
そのためまずは「根管治療」により最大限の細菌の除去を試みることが第一選択となります。それでも解決されない時に、最後の切り札として歯根端切除術の介入です。
さきほども述べましたが、歯根端切除術は、根尖を切断したあとに根管を少し掘り(逆根管形成)、お薬を詰めて封鎖(逆根管充填)する必要があります。
ここはとくに精密な手技が求められるため、肉眼で行うのは推奨されません。
マイクロスコープの高倍率視野で、切断面の診査、逆根管形成、逆根管充填を行うことによって90%の成功率を導くことができるのです。
■まとめ
・神経が生きている場合の「根管治療(=根の治療)」の成功率は95%を超える。
・治療歴が数回以上あり、かつ膿の袋がある「根管治療」の成功率は約40%である。
・「根管治療」で治らない場合は、「歯根端切除術」の介入が必要となる。
・マイクロスコープを用い、厳密な治療手順のもと行う「歯根端切除術」の成功率は90%である。
・専門医の元で「歯根端切除術」も含めた治療管理を行った場合、膿の袋が治らない可能性は極めて低い。
主な診療内容
生活歯髄保存療法
大きな虫歯でも神経への虫歯の菌の侵入が軽度の場合、虫歯を除去後、神経の近くにお薬を置き、緊密に封鎖して神経を保存する治療法です。
抜髄(ばつずい)
神経の深くまで虫歯の菌が侵入した場合に行う、神経をすべてを取り除く治療法です。
感染根管治療
虫歯の菌が神経の深くまで侵入してから長期間経過した場合に行う、すでに死んでいる神経すべてと感染物を取り除く治療法です。
再根管治療
症状が改善しないまたは再発をくり返すような歯に対して、再び根の治療を行うことを再根管治療といいます。
外科的歯内療法
歯ぐきを切開し、炎症の原因となっている歯根の先端を切除する治療法です。